2009.08.28



ご質問、ありがとうございます。
これから質問される方にお願いですが、よろしければ、簡単なプロフィールを教えていただくと嬉しいです。
といって、プライバシーは尊重しますから、俳優であるとか、高校演劇をやっている高校生であるとか、顧問であるとか、サラリーマンであるとか、大学で演劇をやっているとか、小学校の教師であるとか、OLであるとか、そのていどで結構です。質問は、きわめて特殊なものでない限り掲示板に載せ、解答もそこでしようと思っています。
ですから、掲示板にでる場合は、匿名または、イニシャル程度の表記を希望される方は、名前とプロフィールとは別に、匿名希望や、ハンドルネーム、イニシャル希望とお書きください。
では、質問に答えます。


(質問その28) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:43 ◆レッスンナンバー:3

S音タイムレッスンをやっても、7,8秒くらいした、息を吐けません。口からだけでなく、鼻からも吐いているのが原因のようです。鼻声です(以前から)。話すと疲れやすいのも、鼻から空気が漏れてしまうために、発声効率が悪いのかと思いました。鼻から吐くのを直す方法はありませんか。

(解答)
メール、ありがとうございます。

鼻声だそうですが、鼻は詰まっていませんか?鼻声の人は、多くは詰まっていますから、鼻から息が漏れるということはなかなかありません。

本当にたくさんの息が鼻から漏れていますか?
鼻を手で塞いで、秒数を測ってみましたか?それで、劇的に時間が伸びましたか?

鼻から息が漏れていると神経質になるより、軽い運動を続けて肺活量を増やすのがいいと思います。
もしくは、焦らず、毎晩、深い呼吸で横隔膜を下げる運動を続けてください。


(鴻上尚史)



(質問その27) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:226 ◆レッスンナンバー:4-1

こんにちは、唐突ですが、質問があります。

レッスン4をやっていて、以前は伸ばしているわき腹がスーとしていく感じがあったと思うのですが、最近なぜか伸ばす方と逆のわき腹の筋肉が緊張してしまいます。腰が曲がっているのか、顔が曲がっているのか、背骨が曲がっているのか、いろいろやってみましたが以前のようなスーとした感じが味わえません…。

(解答)
メール、ありがとうございます。

すみません。ちょっとよく分かりません。ひょっとしたら、最初のうちは、横腹が縮こまっていたのでスーッとしたのに、何回も繰り返すことで、体の側面が素敵にストレッチできているからかもしれません。

そうでなければ、スーッとする感覚を求めて、無理に体を伸ばしているのかもしれません。
右手を伸ばしている時は、左肩を下に下げる感覚。スーッとした感覚がなくても、続けることが大切ですから、無理はなさらず、焦らず、続けてください。
(鴻上尚史)



(質問その26) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:63,81 ◆レッスンナンバー:7,10

私は声優になりたいと思い、1年前から声優になるための学校に通っています。しかし、そこではお芝居のレッスンが中心で、発声や身体の作り方は自分でやって下さいという方針の学校です。そして、なんだかいまいちわからないまま1年弱自分で筋トレや発声、滑舌の練習をして参りました。すごく危険だと思いつつ1年が経とうとした時(1か月程前)にこの『発声と身体のレッスン』という本に出逢い、この本を参考に声の勉強を始めました。

そこで、「こえ」のレッスン7のハミングレッスンについてお聞きしたい事があります。
喉以外の部分を振動・共鳴させようとしても、その部分と一緒に喉が振動してしまうのです。
例えば鼻を振動させようとして、ハミングをすると、ちゃんと鼻がムズムズする感覚はあるのですが、喉を触ると喉も振動しているのです。
私がしているハミングは全て喉を中心に振動している状態なのでしょうか?

次に、レッスン10のロングトーンレッスンについても質問があります。
私は喉を閉めてしまう癖があります。それに気づいてからは喉を開放するようにと、この本を参考にしながら毎日発声練習をしているのですが、ハミングをすると音にシャーといった音が混ざっています。それはロングトーンでも同じです。
喉を閉めているのかもしれないと思い、p.81のロングトーンレッスンをしながら上を向く方法を試していますが、ふっと開く瞬間にも気づき、楽な感じはあるのですが、変わらずシャーと音がします。
これは、まだ力んでるからなのでしょうか?或いは喉が痛んでいる状態なのでしょうか?
又、そういった場合、発声レッスンは全くしない方が良いのでしょうか?

しかし滑舌の練習は毎日しないと顔や舌の筋肉が衰えてしまう気がします。

そういった場合、声は出さずに、顔の筋トレや舌・唇を動かす程度にとどめておいた方が良いのでしょうか?

長文失礼致しました。お返事よろしくお願いいたします。

(解答)
メール、ありがとうございます。
まず、最初の質問ですが、ノド以外のどの部分でハミングしても、ノドは振動します。ノドには声帯がありますから、震えるのは、当然なのです。ですから、心配しないでください。

ただし、例えば、右手で唇、左手でノドを押さえてハミングして、唇の振動がメインでノドの振動がサブ、という場合と、ノドの振動がメインで唇の振動がサブということはできます。分かりにくければ、鼻と唇だと簡単だという人も多いです。右手で唇、左手で鼻を触って、ハミングの振動を、唇をサブ、鼻をメインというものから、息継ぎなしで、さっと唇の振動メイン、鼻の振動サブに移すのです。こうすれば、共鳴の場所を比較的簡単に動かすことができます。

ノドはいつも振動しながら、それぞれの場所の振動をメインにするようにしてください。


さて、次の質問。シャーという音に気付いたことが、まず、大きな進歩です。
そして、ノドが開いた感覚があるのに、シャーという音がするということは、まだ声帯がうまく合わさってないということです。

まだ力んでいるのか。それとも、そもそも、声帯が痛んでいる場合があります。もし、普段からシャーという音がする場合は、耳鼻咽喉科に行ってみることをお勧めします。

力みがないと感じられるのに、シャーという音がする場合は、声帯が痛んでいる可能性があります。

ただし、首や肩、胸の力をだんだんと抜いていくこと。それから、あくびが出る直前のノドの状態。それを感覚で掴めるようになれば、シャーという音が消えるかもしれません。

地道に続けてみてください。
がんばってくださいね。
(鴻上尚史)



(質問その25) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:84のc ◆レッスンナンバー:10

音読ボランティアを始めた50代の主婦です。いつも声が前に出ていない、こもっていると注意されます。一人で練習していますが、ロングトーンでは自分なりに少しづつですが出てきているような気がするのですが、むつかしいです、声を前に出すために、一番必要なことは何でしょうか。

(解答)
メール、ありがとうございました。音読ボランティアは、続けていらっしゃいますか?

返事、遅くなって本当にすみませんでした。
さて、質問ですが、声を前に出す一番は、ベトクルを意識することです。

声のベクトルです。いつも、自分の声の方向と幅を意識するということです。

普段から、少し離れた人に向かって、意識的にあの人に届けようと思うだけでも、声のベクトルを操縦できるようになります。
疲れたり緊張すると、声をどこに届けようとしているかというベクトル意識がなくなってしまいます。
常に、声の方向と幅を意識すにようにして下さい。
それでは。
(鴻上尚史)



(質問その24) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:50 ◆レッスンナンバー:4

2度目の質問です。
私は、接骨師で60歳。治療室のオーナーが演劇塾を主催しています。ライフワークとして「丹田」を研究しています。
疑問点を申し上げます。
丹田は「小さく、柔らかく、凹む」のが正しいあり方、また構造的にヒトの体型は「四肢動物」を基本としています。
犬の丹田、猫の丹田が正しい機能と考えます。
丹田は本来、高い位置にあり、凹む。
しかし、ヒトは直立したため丹田が下位に位置し膨らもうとします。
ヒトが正しく起立するには、丹田を引き上げるイメージが必要になります。
「腹式呼吸」の吸気時、丹田を膨らませるのは、不自然であり健康に害をもたらす。
鳥や馬の呼吸法を見習っても良いのでは。

レッスンにて、「膝たて」「祈りのポーズ」「セミスパインのポーズ」などは、丹田が凹みよいと思います。

背骨にを支柱にする、首の骨で頭を支える・・などは、常識化していますが、動物の背骨と比較すればおかしい。背骨に荷重をかけるから、腰や肩に痛みが生じる。
背骨は大黒柱ではなく、単なる梁である。
実際背骨は20数個に分かれていて、グニャグニャである。

骨盤底筋群も、四肢動物では少し凹む(体内方向に)。膨らませるのは危険。
ヘルニア、子宮脱、膀胱脱、尿漏れなどの原因になる。

身体や呼吸の下支えは「丹田」が担います。丹田にもたれかかれば力みも出ません。骨にもたれると硬くなります。

演劇は健康を求めるものではないでしょうが、役者は健康であってもらいたい。

以上勝手な意見ですが、参考にしていただければ幸いです。

(解答)
メール、ありがとうございました。

丁寧なご指摘、ありがとうございます。

まず、僕自身の考えていることを書きます。

「丹田」は、身体の中心であり、抽象的に言えば、エネルギーの中心です。ですから、「丹田」自体が、へこんだり、ひろがったりするものではないと思っています。

呼吸は、肺を広げないとできません。横隔膜を動かして、肺を広げる呼吸を一般的に腹式呼吸とまとめているのですが、横隔膜は、下にも横にも広がります。

つまり、短い呼吸を連続してやる時など、お腹がへこむのは、横隔膜が下に下がらず、横に広がっているからです。体が横に広がり、体の内部にも横方向に空間ができるので、相対的に内臓が引っ込むのです。
横隔膜が横に広がり、それにつれて肺も横に広がって空気が入ってきて呼吸できるわけです。
横隔膜を下に下げることで、肺が大きく広がれば、深く大きな呼吸になります。

いずれも、横隔膜の運動であって、丹田とは関係がないと僕は考えています。

これが、深い腹式呼吸は、丹田にあたる部分がふくらむのであり、丹田をふくらませているのではない、ということです。身体の中心である丹田は、へこませたり膨らませるものではないと考えているのです。

ですから、ご指摘の真意は、横隔膜を下に下げる呼吸より、横隔膜を横に広げる呼吸の方が人間には適切ではないのか、ということだと考えます。

ちなみに、胸式呼吸と横隔膜を横に広げる腹式呼吸の違いは、胸の上部、肩に近い部分が動くが動かないかで判断できます。
胸式呼吸は、肩に近い部分が動きます。横隔膜を横にする呼吸は、肩は動きません。
その違いです。

ここからは、ソメッドというか、開発者がどの呼吸が自分に気持ちがいいのか、自分の身体が深い部分で欲しているのか。という議論に入っていくと思います。

僕自身は、横隔膜を深く下げ、丹田に当たる部分を意識する方が、深く落ちついた呼吸ができると思っています。

また、背骨に関するご指摘は、まったくその通りだと思います。直立歩行した瞬間に、人間は、身体的な難しさと出会ってしまったのだと思います。

「丹田にもたれかかる力みのない」方法は、とても素敵です。それが、簡単にできるようになれば、どれだけの人達が体の悲鳴から解放されるか。
日本をはじめ、世界中のメソッド(方法)は、それを求めて試行錯誤を続けています。
アレクサンダーテクニークやフェルデンクライスメソッド、野口体操、野口整体、こんにゃく体操、あらゆる人達が素敵な試行錯誤を続けています。

どうか、素敵な方法、実践が見つかれば、世にどしどしと発表していただきたいと思います。

僕ももちろん、参考にさせていただきます。

なお、「丹田」については、僕よりももっと詳しいスタジオ・レイの加瀬玲子さんの「片体重と無限大・加瀬メソッド 和物編」(発売元 オーム社)に詳しく説明されています。もし、よろしければ。

メール、ありがとうございました。
(鴻上尚史)



(質問その23) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:22-26

腹式呼吸では吸気のとき腹が膨らみ、呼気のとき腹がへこむということです。ところが、私がみた腹式呼吸の説明ヴィデオでは、モデルの米人女優は発音時に腹が膨らみ、息を吸う時にへこみます。実生活のペース(呼吸気がすばやく変わる)ではこちらが自然のような気がします。私はイギリスで発明された横隔膜強化器パワー・ブリーザーを3年ほど使っていますが、短い間隔で呼吸した場合は、ヴィデオの女優さんのようになってしまいます。いかがでしょうか?

(解答)
メール、ありがとうございます。 腹式呼吸とは、御存知のように横隔膜を動かすことによって、肺を広げ空気を取り込む運動です。
横隔膜は、下にも動きますが、そのまま横に広がることもできます。

つまり、下に下がれば、内臓を圧迫して、お腹が出ます。ところが、下に下がらず、そのまま、横に広がれば、肺は横に広がって呼吸することになります。
この時、横隔膜は内臓をまったく圧迫しないだけでなく、体の内部では、横の方向に空間が広がるので、内臓が相対的に引っ込むことになるのです。

短い呼吸の時に、お腹が引っ込みがちなのは、横隔膜が下に下がる時間と運動がなく、そのまま、横に広がることが多いからです。

米国人女性は、横隔膜を横に広げる運動を意識的にしているのだと思います。胸式呼吸と、横隔膜を横に広げて呼吸する腹式呼吸の違いは、胸の上部の部分、肩に近い場所が動くか動かないか、で見分けることができます。

胸式呼吸は、肩に近い部分が動きます。が、横隔膜を横に広げる呼吸では、動きません。


で、問題は、横隔膜を横に広げる呼吸ですが、短い呼吸で出現するのは、問題ないと思います。

深く呼吸する時には、(つまり、長い文章を語る時などは)、やはり、横隔膜を深く下げる腹式呼吸が望ましいと僕は思っています。

メソッドとして、違うことをおっしゃっている方もいるかもしれませんが、究極は、自分の体がどちらを欲しているか。どちらかが気持ちいいか。ということだとは思います。

質問、ありがとうございました。

(鴻上尚史)



(質問その22) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:86 ◆レッスンナンバー:11

初めまして、お忙しい中失礼します。
社会人でエンジニアをやっております。
私は、声量のコントロールが出来ず、人から「声が小さくて聞き取れない」「声が大きすぎる」と言われ、また、調子よく喋ったあとには、決まって喉を痛めます。それを改善したく、今回本を購入させて頂きました。
今回質問させて頂きたいのは、「お腹で声を支える」ということについてです。
私はお腹で声を支えようと丹田を意識すると、下腹部がキュッとなるのはいいのですが、同時に喉にも力が入り、緊張したような感覚になっていまいます。ちなみ壁を押しながら声を出す場合はできるのですが・・・。 これは、単にまだレッスンのやり込みが足りないせいでしょうか、それとも、筋力が不足しているのでしょうか?
是非、お教え願います。

追伸
ハミングレッスンを続けてきたせいか、最近「よく響いて通る声をしている」を周囲から声を褒められるようになりました。少しずつですが、レッスンの効果が出てきているようです。ありがとうございます。

(解答)
メール、ありがとうございます。
筋力の問題ではありません。それは、一番簡単にいえば、癖(くせ)というものです。腹筋辺りに力をいれることと、喉の周り、首や肩に力が入ってしまうことが、無意識につながってしまっているんだと思います。

壁を押したり、体を前傾に倒したり、というレッスンを続けていただいて、徐々に、お腹だけを意識するようにしてください。最初はなかなか、うまくいかないと思いますが、やがて、体は慣れてくるはですです。

力が入ったなあと感じたら、首を回すとか、肩を上下させるとかして、ほぐてしあげてください。緊張するたびにほぐしていけば、やがて、体は、「ああ、緊張しなくていいのか」と思うようになってくれますから。その時、緊張することに神経質にならないこと。神経質になると、間違いなく、余計、緊張します。
無意識に緊張してしまう自分の体を楽しむぐらいの気持ちでいてください。

毎日の地道なレッスンが間違いなく、あなたの声を変えます。これからも、続けていってください。 それでは。
(鴻上尚史)



(質問その21) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:127 ◆レッスンナンバー:20

はじめまして。
舌を口の中で回すレッスンを行うとどうしても下アゴがもごもごと動いてしまうのですが、この現象はレッスンをやる上で支障はありますか?

(解答)
べつに支障はありません。どうしも気になるようでしたら、下アゴを軽く手で押さえて、舌を回してみて下さい。それで、下アゴが止まるようなら、その感覚を覚えて下さい。
それでも、下アゴがモゴモゴと動くようでしたら、気にしなくて結構です。
では、レッスンを楽しんで下さい。
(鴻上尚史)



(質問その20) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:73 ◆レッスンナンバー:1-9

現在、声優の養成学校に通っている二十歳の大学生です。個人的にいろいろ本をあさっていた中、「発声と身体のレッスン」を見つけました。

僕の声はもともと「声帯をプッシュ」しているようで、普段から喋っていてもシャリシャリいっています。「s音タイム」もまだ二十秒ギリギリです。なのでいまきちんと「s音」「発声の為の身体のレッスン」などをやっておきたいのですが、もうすでに学校で発声練習をしてしまっていて、これからも「あ、え、い、う」というような練習をやっていかざるを得ず・・

普段から声帯をプッシュしているのに加え、レッスン9への参加条件ぎりぎりな現状で「発声練習」をさらに行ってしまうことが予想され・・。

学校の先生に逆らって、「私は声帯が疲れているからやりたくない」と言うべきなのか、それとも「s音」などをやりつつ「既にしてしまっている発声練習」をやりながらレッスンを続けるべきなのか、
とても今迷っています。どうか宜しくお願い致します。。

また、あくびの喉をやってみて「通った」感じがして音を出すと、逆に「喉を凄く使っている、喉で支えている」感覚があります。これは喉をリラックスできていないという事なのでしょうか、そうなら、どのような感じが「良い」のでしょうか。。周りの人もそうなのですが、特定の俳優さんなどを挙げていただけると有難いです。

また「s音」で、唇は少し開いているだけだとしても、歯はどのようにかみ合わさっているのかを教えてもらいたいです。今僕は前歯が下唇に少し触れていて、下歯は下唇の後ろに隠れているような感じになっています。
(解答)
レッスンの調子はどうですか?では、ひとつひとつ、お答えしますね。

まず、「学校の先生に逆らって、「私は声帯が疲れているからやりたくない」と言うべきなのか、それとも「s音」などをやりつつ「既にしてしまっている発声練習」をやりながらレッスンを続けるべきなのか、とても今迷っています」ということですが、先生に対して、「やりたくない」と言うのは勇気がいるでしょうし、時間ももったいないですね。貴重なレッスン時間ですから。
ここはひとつ、発声練習を、無理に押し出した声でやらず、落ち着いて、共鳴を探す感じて、やや小さめの声から始めるのがいいと思います。実際、S音が終わらなければ、絶対に、次に行ってはいけないということはありません。自分のノドに自覚的に「ア エイウ」とやることは、大切なことです。

さて、次の質問。

> また、あくびの喉をやってみて「通った」感じがして音を出すと、逆に「喉を凄く使っている、喉で支えている」感覚があります。これは喉をリラックスできていないという事なのでしょうか、そうなら、どのような感じが「良い」のでしょうか。

あくびのノドが、「凄く使っている」感じがするのなら、ノドが開いてない可能性があります。本当にあくびの時のノドでしょうか?あくびを真似しているノドではありませんか?本当にあくびのノドなら、あくびの終わりの方、「あ〜」の「〜」の部分のノドではありませんか?「あ」の最初のノドが、開いたノドです。
通っている声優さんの声は、声優さんは、「開いたノド」と「閉めたノド」を、感情やキャラクターによって、使い分けているので、特定の個人名を言うことはできません。ただ、多くの声優さんは、ノドを開くことができる、とは言えます。

次の質問。


「s音」で、唇は少し開いているだけだとしても、歯はどのようにかみ合わさっているのかを教えてもらいたいです」 については、そんなに神経質になることはありません。どのようにかみあわさっていてもいいです。ただ、少し、間があいていればいいのです。


ふだんからしゃべっている音がシャリシャリいっているそうですが、お医者さんには行ってみましたか?ノドや声帯に詳しい耳鼻咽喉科さんを見つけて、一度、声帯を見てもらうのもいいと思います。
大きな都市なら、そういうお医者さんは必ずいらっしゃいます。インターネットで調べてみることをお勧めします。ひょっとしたら、声帯にポリープや結節ができているかもしれません。

ともあれ、レッスンは楽しみながら。焦らず、ノンキな気持ちで続けて下さい。
(鴻上尚史)



(質問その19) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:67 ◆レッスンナンバー:7

はじめまして。密かにアニメ声優を目指している、時間もお金もない地方在住の主婦です。お忙しいところ失礼致します。
5つの部位を振動させることはできるのですが、それぞれ単体で振動させることができません。鼻や喉は震えが小さくはなるものの常に振動しています。胸を振動させようとすると決まって頭も振動してしまいます。骨を伝って振動が全身に広がってしまうのだから、別々に振動させるなんて不可能なのではないかしらと、半信半疑になってきてしまいました。
レッスン9の注意点のa(P.76)にある内容と似ていますが、私の場合、何時間大声で歌っても声が嗄れることはないので、喉だけで共鳴させているわけではないと思います。
また、一人で練習しているため、他の人の音を聞き分ける練習ができません。
本当に、練習を続ければ5つの部位を別々に振動させることができるようになるのでしょうか。
レッスン7や8ができないうちに先に進むと、それまでの努力が無駄になると書いてありますが、絶対に先に進んではいけないのでしょうか。
(解答)
一人でレッスンを続けてらっしゃるのですね。大変だとは思いますが、楽しみながらがんばって下さい。
さて、ご質問の「5つの部位を単体で振動させることはできるか?」ということですが、もちろん、単体ではできません。
特に、唇と鼻の振動は、密接ににつながっています。また、厳密には、どこを振動させていても、ノドの振動を感じます。
テーマは、5つの部位を別々に振動させる時に、それぞれの場所の振動が、一番、メインにすることです。
右手で鼻、左手で唇を触って下さい。そして、唇をメインに振動させる時と、鼻をメインに振動させる時を分けてみて下さい。
両方とも、鼻も唇も、両方、振動していますが、鼻がメインの時は、もちろん、鼻が唇より強く振動し、唇がメインの時は、鼻より唇が強く振動できるようにして下さい。
また、一人でレッスンしていると、なかなか、聞き分けのはむずかしいと思います。
こっそりと、同好の士を見つけられるといいのですが。そして、お互いの声を聞き分けるようにするのがいいと思います。
大変だとは思いますが、楽しみながら。
それでは。(鴻上尚史)



(質問その18) - 発声と身体のレッスン - ◆質問に関するページ:190 ◆レッスンナンバー:2

はじめまして。
都内で演劇活動をしている者です。今回自主稽古のテキストとして活用させていただいています。
セミスパインの形に関して質問です。
横になった状態で顔と床が平行ということですが、額とあごの線を結んだものと床面が平行ならばいいのでしょうか。
枕を入れた方がいいのかどうかが、なかなか見分けが付きません。
どこを基準にしたらよいのかだけでも、教えていただけるとありがたいです。
ご多忙中とは存じますが、よろしくお願いいたします。
(解答)
これには、ちょっとコツがいります。
額とアゴを厳密に結ぼうとすると、アゴがでている人とか、おでこが出っ張っている人がいますから、そこで、迷ってしまいます。
頭全体に対応する一本の線を意識すると、簡単です。
そのためには、頭全体をちょっと引いて眺めて、顔の部分に線を引くというより、頭のど真ん中に、背骨から伸びてくる一本の線をイメージして、それを、そのまま、顔の上まで上げてくるのがいいと思います。

どうしてもわからない場合は、神経質にならなくていいです。
首の後ろの感覚に集中すれば、逆に、そこがふっと楽になる瞬間が、頭が床と平行になっているポジションです。
平行にしようと神経質になるのではなく、首の後ろの感覚に正直に従ってください。

それと、何が平行なんだろうといろいろと試行錯誤をすることは、とても素敵なことです。
そうして、あなたは自分の体と出会うのです。
神経質にならず、ちょっと頭を引いて眺めて、頭をスイカのようにスパッと立てに切ったとイメージして、その断面と床が平行になるとイメージしてください。
(鴻上尚史)



(質問その17)

どうしても大勢の前にたつと頭が真白になって自分の話に意識してしまい、途中で自分が何をいいたいのかわからなくなってしまいます。緊張せず震えないように思えば思うほどアセってしまいます。おかげで学校のプレゼンが毎回うまくいかずみんながしらけてしまい困っています。なんかアドバイスあればぜひ教えて下さい。
(解答)
うむむ、これはまた、基本的な質問ですね。
「こえ」と「からだ」の見方からすると、1)意識的に声を低くしてみる。2)自分がいつも緊張する体の場所をリラックスしようと意識する。
というようなことがスタートですが、それよりも、まず、A)うまくやろうとしない。B)プレゼンの目的に集中する。C)今の感覚で話す。という三つのことが大切だと思います。
というのも、これは、演技の基本的な緊張と似ているからです。
演技で緊張してしまう人は、まず、「うまくやろう」とする人です。「失敗してもしょうがない」とか「うまくいったらめっけもの」とか「なるようにしかならない」とか思うことは、とても大切です。
なぜなら、どんな名優でも、一回の芝居で、一度は、セリフをとちりそうになります。その時、「うまくやらないと」と思っていると、そこですぐにパニックになります。が、「失敗することもある」と思っていると、一度の失敗はただの一度の失敗で終わります。その後に影響しないのです。
「うまくやろう」と思えば思うほど、一回の失敗が、決定的なダメージになります。なので、何を言いたいのか分からなくなったら、深呼吸ひとつして、「おっ、ひとつ、間違えちゃった。ま、こんなこともあるよね」と思ってください。

B)の「目的」とは、「うまくやろう」とか「恥をかかないようにしよう」とか「賢いと思われよう」という「目的」ではなく、その時のプレゼンの内容に集中するということです。
演技でパニックになる人は、「かっこよく演じたい」とか「うまくやりたい」とか「恥をかきたくない」というような目的で演じます。が、パニックになならない人は、役の目的に集中しています。役の目的とは、ジュリエットなら「なんとかロミオと話したい」とか「ロミオと会いたい」とか、その場、その場での具体的なことです。「ロミオに会いたいから、どうしたらいいのか神父さんに聞きに行こう」と思って演じるジュリエットは、決して、パニックになりません。が、「うまくやろう」と思って演じるジュリエットは、簡単にパニックになるのです。

C)の今の感覚で話すというのは、プレゼンの内容をちゃんと決めていても、その手順通りに、復習のように繰り返さない、ということです。これも、演技と同じです。
決めた手順ので言い始めて、聴衆がまったく乗ってこない時に、それでも、きめた通りの言い方を繰り返すと、どんどん、聴衆が離れて、パニックになります。
演技も、もちろん、毎回セリフは同じですが、相手のコンディションや観客の状態で、言い方が微妙に変わります。いえ、微妙に変えられる俳優が、成功するのです。
どんな観客でも、相手役の体調がどうでも、決めた言い方を毎回繰り返す俳優は、結果的に観客とのコミュニケイションに失敗するのです。

で、結論としては、誰でも、プレゼンの時には、「緊張して震える」のです。「緊張せず震えない」のは、人間ではありません。
1・2・A・B・Cのことを意識しながら、何回も経験することです。 これも、演技と同じです。演技がうまくなるためには、とにかく場数です。たくさん経験すれば、間違いなく、うまくなります。
過度に反省しないで、どんどん、挑戦してみてください。
間違いなく、楽になっているはずです。
(鴻上尚史)



ご質問、どうもありがとうございました。

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