舞台は地方都市。
稀代の詐欺師 大庭三吉は見えない幽霊と旅をしている青年 深川啓介と出会います。
大庭は幽霊を利用した新商売を思いつき、「死人の写真高く買います・・・」こんな奇妙なビラを貼りだします。集めた写真から、成仏できずにいるこの幽霊の身元をつきとめようというのです。街は混乱、騒ぎはエスカレートし、ついには幽霊に結婚相手を世話しようという事態に発展してゆきます。初演は1958年、俳優座により初演されました。（演出 千田是也 出演 三島雅夫・大庭三吉役、田中邦衛・深川啓介役）
そのときの写真がコレです。
↓
（1958年6月23日俳優座・写真提供 安部ねりさん）
池乃めだか
●大庭三吉という人は、悪人であって悪人でないような。
「このコップが200円としたら、その値段は誰が決めるんや。これは200円払う人がおるから200円という値段が決まるんやないか」と一応筋の通った、屁理屈のようなことを言う。それが幽霊であってもそれに対して金を出すもんがあったらそれはその値段やし。だから俺は何にも悪いことしてないやないか、と自分的には合理的に物事を運んでいる。そんな大庭さんに対して、街じゅうの人たちが、欲得で巻き込まれて、だんだん話が膨らんでくるというところがおもしろいんちゃうかな。それで、僕がそれをちゃんと表現できるかどうかを考えると、・・・夜も眠れない。いまは、助走の2、3歩やなあ。とりあえず楽しもうと思ってます・・・そうしないと体がもたん(笑)！
鴻上尚史
●京都で浪人していた頃、大阪のサンケイホールでやっていた安部公房さんの『時の崖』っていう映画の上映会に行ったことがありまして。会場にご本人が現れて、『これには深い意味があると思って、みなさんお笑いにならないんですけど、笑ってもらっていいんですよ』って、・・先生が言ってました(笑)。「幽霊〜」は、ある面からするととても痛々しい悲劇なんですけど、でもそれはちゃんとおかしいっていうか。人生の真実が見えてきて、それに打ちのめされるんではなくて、それを元気に笑いとばすっていうか。この作品が安部公房が人間の存在とは何かというのを形にした、っていうことだけで終わるんじゃなくて、形にしたものはちゃんとエンターテイメントになって、今に通じるんだっていうところにいければいいなと思います。
木野花
●株とかブランドとか実体のないものに、人がとびついて値段が上がってゆく仕組みって、「幽霊に金出してるよ」っていうのと同じで。 それを「だからダメなんだ」って言うんじゃなくて、肯定も否定もせずに「これが人間」って放り出してる。登場人物はみんなたくましくて、人間くさい。今も昔も変わらない。「とにかくめげずに生きていかなくちゃ」というバイタリティにあふれていて、人間を面白がってる作家の懐の深さを感じます。
↓RealPlayerをお持ちでない方はこちらから
|
56Kbps (軽いです)
