感動的なラブレター 鴻上尚史
 

 今回、紹介する手紙に、僕は感動しました。名作の長編小説を一編読んだような、感動を経験しました。僕がここで、ぐだぐだ言うより、札幌の香さんの手紙を紹介したほうがいいようです。

「同封した手紙は、10年前、今つきあっている彼から、もらったラブレターです。私と進くんは、中学1年の時の同級生でした。(中略)2年生になって、私は転校しました。新しい学校には、進くんのような人はいあなく、つまらないなあと思っていた矢先、この手紙が届きました。正直、びっくりしました。いろいろなことがありました。『中学のときから、たった一人の人とつきあってるなんて、バカみたい』と友だちに言われたこともあります。(中略)『もっと、いい男とつきあえるのに』と言われたこともあります。(中略)大学は、二人遠く離れてしまいました。進くんが、後輩の女の子と浮気したこともあります。私が誘惑に負けそうなこともありました。離れていた4年間は、本当につらくせつなかった。でも、私はそういう時、いつもこの手紙を眺めて、じっとがまんしました。(中略)そして今年4月、二人とも卒業して、地元に就職しました。もうつきあって10年たちます。私の青春は進くんだけだったと言っても、過言じゃありません。(中略)でも、後悔はしていません。13歳の時に、本当の相手とめぐりあってしまったのだと思っています。(中略)来年4月、とうとう進くんと結婚します。(中略)この前、『私に初めてくれた手紙の内容覚えてる?』ってきいたら、この短い文を1字1句まちがえずに、覚えていました。とても嬉しかった。この手紙を、もし進くんがだしていなかったら、私たちは、きっと結婚するまでには、いたらなかったと思います。他人が見たら『これがラブレター?』って言いそうなそっけない手紙ですが、私にはなににもかえがたい大切なものです」

さて、その内容です。全文、書きましょう。

『オレ、お前のこと信用している。このこと誰にも言わないと。1年のころからあこがれていた。恥も忘れる。人の目も無視する』


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