春にして君とわかれ
若手番外公演


若手番外公演なのであります。おそらく最初で最後なのであります。

もとはと言えば、2月に芝居が終わったばかりなのに、3月にもう芝居をやるなんてのは、どう考えても放送禁止用語ざただと思っていたのであります。おかげさまで2月の紀伊國屋は大好評のうちに終えることができて大変喜んでおったのであります。が、御存知かどうか分かりませんが2月の「朝日のような夕日をつれて」は男5人しかでてこない芝居だったのであります。で、女優たちはぶーぶーぶーたれて、ブタになりそうだったのであります。

残された新人男優達は、「朝日〜」5人組のうち、誰か一人でもネンザしないかと神に祈っていたのであります。(そのうちタタリで、名越は声がかれたのです。あのうまい名越です。それ以外、考えられません)

芝居は、その1つ1つの1回1回が生きざまのマニュフェストであるとかんがえている第三舞台は、手軽な芝居作りという昨今の風潮と無縁でありつづけたいと願っています。

が、女優達がぶーたれて、ブタになりはじめたのです。ひどいのになると、ブタを通りこして馬になったり、サイになったり、フナになったり、お好味焼きになったりしはじめたのです。いけません。これはいけません。

男優達は、と見ると、失望のあまり、ヘラヘラしたりニコニコしたりして頭が空洞になったり、思わず新幹線にとびのったりスタッフになる決心を固めたりしはじめたのです。いけません。これはいけません。

どうしたらよかんべと頭を悩ましていると、小須田がやってきて「鴻上サン、あっしは客入れをやりますよぉ」と、言ってくれたのです。

大高は歌を歌って僕をなぐさめてくれました。
名越は踊りを踊って僕をなぐさめてくれました。
伊藤は何もしてくれませんでした。

で、いっちょやるかと、決心しました。女優達がブタになる前に、男優達がうーぱーるーぱーになる前に、最初で最後の若手番外公演です。だからと言って言い訳をするつもりはありません。6月の本多劇場へ向けて、とてもシビアなワン・ステップだと私達は考えています。

愛はせつないなあと感じている今日このごろなのです。せまい所ですが、ごゆっくりごらん下さい。

鴻上尚史

'85.3.19.


舞台写真


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